Ver.2.9、「1日5セッション制」に全面刷新しました

AI家庭教師 実践記

前回は、セッションの合間に聞かれる「続ける?」という不要な確認をなくしました。

Ver.2.8、セッションの合間に聞かれる「続ける?」をなくしました
AI家庭教師Ver.2.8の変更内容を公開。日次目標未達のセッション終了時に毎回「続ける?」と聞かれてしまう不具合を修正。TeacherSystem該当箇所を全文公開します。

これまでのVer.2は、「1セッション=新出単語3語」という単位を軸に、その周りに終了前復習やセッション管理のルールを積み重ねてきました。今回は、この「1セッション=3語」という前提そのものを見直す、これまでで一番大きな設計変更です。


1. きっかけ:「これまで全体の問題も復習したい」という要望

きっかけは、子どもからのシンプルな一言でした。

これまでの授業全体で出題された問題も復習したい

これまでのプロンプトも「即時復習」「終了前復習」「単語想起の段階ヒント」など、復習の仕組み自体は充実してきていました。しかし、それらはいずれも直近のセッションや、当日の弱点を対象にしたものが中心で、「これまで積み上げてきた全履歴から、忘れていないかを確認する」という視点が抜けていたことに気づかされました。


2. 現状分析:5種類の「復習」が、明確に整理されていなかった

この要望を、ChatGPTと一緒に整理し直すと、実は「復習」と一口に言っても、性質の異なる5種類が混ざっていることがわかりました。

#種類目的
①次回の方針に指定された問題前回からの継続課題
②そのセッションで不正解した問題その場での即時修正
③初出単語新しい語彙の獲得
④過去に正解した単語本当に維持できているかの確認
⑤過去に不正解だった単語弱点の回収

このうち①②③はこれまでのルールでもある程度カバーできていましたが、④(過去の正解が本当に維持されているか)という視点は、ほとんど扱われていませんでした。 一度正解した単語は、そのまま安心して放置されがちだったのです。

この仕組みを実際に使ってみると、以前は正解できていた英単語が、時間を置くと出てこない場面もありました。
実際の授業で何が起きたのかは、こちらの記事にまとめています。

AI家庭教師で英単語を復習して分かったこと|「覚えた」と「思い出せる」は違った
AI家庭教師で英単語の復習を続けてみると、「一度正解した=定着」ではないことが見えてきました。実際の授業で、以前できた単語が出てこなかった場面と、復習の仕組みを変えてきた過程を紹介します。

3. 保護者からの提案:セッションを「役割」で分ける

そこで、「1セッション=3新出語」という単位そのものをやめ、1日を5つの役割別セッションに分けるという原案を出しました。

  1. 過去正解語の復習(10語、日本語→英語)
  2. 過去不正解語の復習(3語、英語→日本語)
  3. 次回の方針に指定された問題
  4. 初出単語(英単語と意味を教えて書かせる)
  5. 今日のおさらい(セッション3・4の再確認)

方向性としては良い提案でしたが、実際にルール化する前に、ChatGPTから5つの改善点が返ってきました。それぞれ、これまでの設計とも深く関わる内容でした。


4. 改善点①:「正解/不正解」を、永久的な二択の箱にしない

「過去正解」「過去不正解」は永久的な所属ではなく、次にどのセッションで出題するかを決める出題キューと定義するのがよいです。

例えば、ある単語を過去不正解セッションで1回正解できたとしても、それだけで「もう克服した」と扱ってしまうのは危険です。これは、これまでも繰り返し出てきた「1回の正解だけで定着度を最上位にしない」という原則と地続きの指摘でした。**「箱を移動させる」のではなく、「次にどの優先度で出題するかを調整するキュー」**として扱うことになりました。


5. 改善点②:「書く」か「言う」かを、はっきり区別する

過去正解語を「日本語→英語」で確認するのは良い方法ですが、口頭で答えるのと、スペルまで正しく書けるのとでは、測っている力が違います。 これまでのカリキュラムにも「意味がわかる」と「正しく書ける」を別技能として扱う考え方があったため、今回もこの区別を踏襲し、**「日本語を見て、英単語をスペルで答える」**という形に統一しました。


6. 改善点③:過去不正解の確認は、2段階で行う

過去に間違えた単語を、いきなり「意味は?」と聞くだけでは、前回できなかったこと(英単語を思い出せなかったこと)を、実は確認できていません。 そこで、次の2段階に分けることになりました。

  1. 第1段階:英語→日本語で、意味の理解を確認する
  2. 第2段階:正解できたら、日本語→英語で、自力想起を確認する

両方向を無事にクリアできて初めて、「過去正解」側の確認候補に戻す、という慎重な設計です。


7. 改善点④:初出単語は「教えて→書く→間隔→自力想起」の4段階に

これまでのVer.2では、初出単語は「まず三択で意味を推測させる」という形式で始めていました。しかし今回、この方式をnew_vocabularyセッションに限っては使わないことにしました。

代わりに採用したのが、次の4ステップです。

  1. 英単語と意味を明示する(例:「kindは”親切な”という意味だよ。k-i-n-d、kind。」)
  2. 続けて、その単語を書かせる
  3. 別の問題を挟むなどして、少し間隔を空ける
  4. 間隔を空けた後、日本語だけを見せて英語を自力想起させる

1〜2は「模写・短期記憶」の段階に過ぎず、本当の意味での定着は、間隔を空けた4番目の自力想起で初めて確認できる、という考え方です。


8. 改善点⑤:「今日のおさらい」は、同じ問題をそのまま繰り返さない

最後の「今日のおさらい」セッションについても、セッション3・4の問題をそのまま再掲するのではなく、答えを見せない自力想起の形式に変換して出題することになりました。例えば、sleepyを教える際に「sleepy=ねむい、sleepyと書いてみよう」と学習したなら、おさらいの段階では「『ねむい』を英語で書いてみて」という形に変えます。これにより、「さっき見たものをそのまま写せた」のか「本当に記憶から取り出せる」のかを、区別して測れるようにしています。


9. もう一つの原則:その場の即時復習は、省略しない

改善案を詰めていく中で、もう一つ重要な原則が確認されました。「後日また復習キューで確認するから」という理由で、その場での即時復習を省略しないということです。

不正解が起きたら、まずその場で原因を確認し、即時復習を行う。そのうえで、その事実を過去不正解キューにも登録し、後日改めて確認する——「その場で直す」ことと「後で確認する」ことは、両方とも欠かせない、という整理です。


10. 最終形:5つのセッションタイプ

以上を踏まえた、最終的な5セッション構成です。

#セッションタイプ役割基本出題
1retention_review(過去正解)長期記憶の維持確認過去正解語から10語、日本語→英語
2recovery_review(過去不正解)苦手の回収過去不正解語から3語、英語→日本語→日本語→英語の2段階
3priority_review(次回方針)前回からの継続課題next_recommendationやreview_queueに基づく(語数固定なし)
4new_vocabulary(初出単語)新しい知識の獲得最大3語、教示→書く→間隔→自力想起
5daily_recall(今日のおさらい)当日の定着確認セッション3・4を自力想起形式で再確認

「3語」という数字の意味も、ここで明確に再定義されました。 これまでは「1セッション=3語」という形で、セッション数そのものを表す数字として使われていましたが、今後は**「新出単語セッション(Session 4)で扱う語数の上限」だけ**を意味します。標準の1日は、この5つのセッションタイプで構成され、daily_session_target = 5が標準値です。


11. バージョン更新

ファイル変更前変更後
01_TeacherSystem2.8-project2.9-project
02_StudentStatus2.3-project2.4-project
04_LessonStart2.1相当2.2-project
05_RuntimeLog/LessonEnd2.5-project2.6-project

今回は、これまでで最も多くのファイル(4つ)が同時に更新されました。


12. 主要ファイルの中身

01_TeacherSystem_Project.md(5セッションタイプの定義・抜粋)

## 日次セッションの基本構成
従来の「1セッション=3新出語」という解釈を廃止する。1セッションは学習目的ごとの機能単位とする。
標準の1日構成は次の5セッションタイプをこの順で実施する。`daily_session_target = 5` を標準とする。

1. `retention_review` — 過去正解語の維持確認
2. `recovery_review` — 過去不正解語の回収
3. `priority_review` — 最新の次回方針・重点課題
4. `new_vocabulary` — 初出単語
5. `daily_recall` — 当日のおさらい

「最大3語」はセッション数の意味ではなく、原則として `new_vocabulary` セッションで扱う新出語上限だけを意味する。

## Session Type 4: new_vocabulary(初出単語)
- Curriculumの順序・前提条件を守り、新出語は標準最大3語。
- 従来の「初出語は最初に三択で意味を推測させる」方式を、このセッションでは使用しない。
- 初出語は次の順で教える。
  1. 英単語と日本語の意味を明示する。
  2. 綴りを短く示す/読み上げる。
  3. 生徒にその単語を書かせる、または入力させる。
  4. 別の問題を挟むなど少し間隔を空ける。
  5. 「日本語 → 英語」で答えを見せずに自力想起させる。
- 直後の書き写し成功だけをA/Sの証拠にしない。間隔後の自力想起を定着証拠として重視する。

## 全履歴復習キュー
最新STATUS_SNAPSHOTには必要に応じて次を保持する。
- `past_correct_queue`: 過去にヒントなし正解したが長期再確認対象となる項目
- `past_incorrect_queue`: 過去に不正解、忘却、ヒント使用、答え提示があった項目

キューは事実記録を消す「所属箱」ではなく、次回の出題優先度を管理する。
同じ項目が履歴上「過去正解」と「過去不正解」の両方の事実を持つことはあり得る。

04_LessonStart_Project.md(起動時の処理・抜粋)

## 標準5セッションタイプ
標準の1日は次の順で実施します。

1. `retention_review` — 過去正解語の維持確認
2. `recovery_review` — 過去不正解語の回収
3. `priority_review` — 最新の次回方針・重点課題
4. `new_vocabulary` — 初出単語
5. `daily_recall` — 今日のおさらい

標準 `daily_session_target = 5`。
「最大3語」は原則として `new_vocabulary` で扱う初出語の上限であり、他のセッションの問題数を意味しません。

### retention_review
過去にヒントなし正解の証拠がある語から最大10語を選び、原則「日本語 → 英語」で1問ずつ出題します。

### recovery_review
過去の不正解・忘却・ヒント使用記録から最大3語を選びます。各語は原則「英語 → 日本語」で意味を確認し、正解後に「日本語 → 英語」で自力想起を確認します。

02_StudentStatus_Project.json(保護者設定・抜粋)

"daily_session_policy": {
  "default_sessions_per_day": 5,
  "sessions_per_day": 5,
  "session_new_words_max": 3,
  "rule": "1セッションを学習目的ごとの機能単位として管理する。標準は5セッションタイプを retention_review → recovery_review → priority_review → new_vocabulary → daily_recall の順で実施する。最大3語は原則new_vocabularyの新出語上限だけを意味する。",
  "session_type_order": [
    "retention_review",
    "recovery_review",
    "priority_review",
    "new_vocabulary",
    "daily_recall"
  ]
}

05_RuntimeLog_LessonEnd_Project.md(キュー更新原則・抜粋)

## キュー更新原則
- retention_reviewでヒントなし正解: past_correct_queueに保持または再確認間隔を延長。
- retention_reviewで不正解/ヒント使用: past_incorrect_queueへ追加し、即時復習も実施。
- recovery_reviewで英語→日本語のみ正解: past_incorrect_queueに保持。
- recovery_reviewで英語→日本語と日本語→英語を両方ヒントなし正解: past_correct_queueの再確認候補へ移行可能。ただし1回でS/完全克服としない。
- new_vocabulary: 教示した語をintroduced_wordsへ追加。直後模写はMastery上昇の強い証拠にしない。
- daily_recall: 当日終盤の自力想起結果を次回review_queueとMastery判断へ強く反映する。

まとめ:「新しく学ぶこと」より「忘れていないか」を大事にする設計へ

これまでのVer.2は、どちらかというと「新しい内容を、どう正確に教えるか」に重点が置かれてきました。今回の刷新は、「一度覚えたことを、本当に覚え続けているか」という、長期的な定着の視点を、初めて仕組みとして組み込んだという点で、これまでで一番大きな一歩だったと感じています。

子どもからの「これまで全体も復習したい」という一言が、結果的に「1セッション=3語」という、最初期から続いていた前提そのものを見直すきっかけになりました。

その後、実際に5セッション制を動かしてみると、また新しい課題が見つかりました。

5セッション制に変更したことで、授業の構造そのものは整理できましたが、実際の授業終了時の動きには、まだ改善の余地がありました。

そこで次の改善として、Ver.2.10では「授業終了後の保護者報告を自動表示しない」という変更を行いました。

詳しい経緯と実際の授業で確認した内容は、Ver.2.10の記事で記録しています。

AI家庭教師の開発・改善履歴|実際に使って見つかった問題と改善の記録
小6の英語先取りにChatGPTをAI家庭教師として実際に使用。実力診断から1プロンプト版、Ver.2への移行、授業モード、セッション管理、段階ヒント、実際に起きた問題と改善履歴を時系列でまとめます。

振り返ると、実力診断から始まり、1プロンプト版の限界、Ver.2への移行、授業モード、セッション管理、段階ヒント、日次設計と、実際の授業で問題が起きるたびに設計を変えてきました。

これまでの試行錯誤の全体像は、【完全ガイド】塾なしで神奈川県公立高校に合格するためのAI活用法でご覧いただけます。


この5セッション制を実際に動かした結果、次に見つかった問題と改善についてはVer.2.10で記録しました。

AI家庭教師Ver.2.10|授業終了後の「保護者報告」を自動表示しない設計に変更しました
AI家庭教師Ver.2.10で、授業終了時の保護者報告を自動表示しない設計へ変更。実際の子どもとの授業履歴をもとに、終了前復習と学習記録を維持し、保護者から「まとめをお願いします」と依頼されたときだけ報告する仕組みを公開します。

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